雇用保険について
建設業を営む中小事業主にとって、従業員の雇用管理は事業の根幹を支える重要な業務です。
労働者を一人でも雇用している場合、雇用保険への加入手続きを行う義務があります。
ここでは、建設業における雇用保険の基本的な役割や加入条件、そして実務上特に重要となる「入社時」と「退職時」の手続きについて分かりやすく解説します。
雇用保険とは
雇用保険の役割
雇用保険は、労働者の雇用の安定や生活の維持、そして再就職を支援するための国の保険制度です。
従業員が失業して所得がなくなった際の失業給付の支給をはじめ、育児や介護のために休業した際の給付など、様々な場面で従業員の生活を守る役割を担っています。
建設現場への入場と雇用保険被保険者番号
建設業において、雇用保険への加入は会社の手続きだけに留まらない極めて重要な意味を持ちます。
元請業者の建設現場に入る際、従業員一人ひとりの「雇用保険被保険者番号」の提示を求められるのが一般的です。雇用保険に加入していない(被保険者番号がない)従業員は、現場に入場できないルールが徹底されています。
現場に入るためには、「労災保険」と「雇用保険」の双方が適切に整っていることが不可欠です。
万が一未加入のまま放置していた場合、法律違反の罰則を受けるリスクが生じるだけでなく、元請業者からの信用失墜にも繋がるため、事業主としての確実な管理が求められます。
建設業特有の二元適用事業
多くの一般産業(一元適用事業)では、労災保険と雇用保険の申告・納付をまとめて行います。しかし、建設業は「二元適用事業」に指定されています。
建設業は仕事の性質上、労災保険と雇用保険を区別して適用する必要があるため、保険料の申告や納付などの手続きをそれぞれ完全に分けて二元的に行わなければなりません。
なお、建設業の労災保険は、工事の元請業者が現場ごとに加入し、下請業者の労働者も含めて現場全体の労働災害を補償するという特殊な仕組みになっています。これに対して雇用保険は、各事業主(下請業者も含む)が直接雇用する従業員に対して、個別に加入・納付手続きを行う必要があります。
雇用保険の加入条件
雇用保険は労働者の権利を守るための制度であり、条件を満たした従業員は原則として加入対象となります。これは建設業の中小事業所であっても例外ではありません。
以下の2つの条件をすべて満たす従業員を雇い入れた場合は、必ず加入手続きを行ってください。
① 31日以上の雇用見込みがあること
雇用契約書等に「更新する場合がある」と記載されており、31日未満での雇い止めが明示されていない場合や、実際に31日以上雇用された実績がある場合などが該当します。
② 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
契約上の「所定労働時間」が週20時間以上である必要があります。一時的な残業等で週20時間超となった場合は対象になりません。
雇用保険(入社)
新しく会社(事業所)を設立したときや、新たに従業員を雇い入れた(入社した)ときには、期限内に管轄のハローワークへ書類を提出する必要があります。
新しく事業所を設置したとき
初めて従業員を雇用し、雇用保険の適用事業所となった場合は、以下の2つの手続きを行います。
①保険関係成立届
保険関係が成立した日の翌日から10日以内が提出期限です。
特殊な専用用紙を使用するため、ハローワーク窓口で入手するか郵送等で取り寄せる必要があります。
②雇用保険適用事業所設置届
事業所を設置した日の翌日から10日以内が提出期限です。
新たに従業員が入社したとき
雇用保険の加入条件を満たす従業員を新しく雇い入れた場合は、その都度以下の手続きを行います。
- 雇用保険被保険者資格取得届
雇用関係が成立した日(入社日)の翌月10日までが提出期限です。
手続きを怠った場合の罰則とリスク
雇用保険の加入手続きを行うことは、事業主に課せられた法的義務です。
これを怠る行為(未加入)は雇用保険法に基づき、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰の対象になります。
違反が発覚すれば、罰則が科せられるだけでなく、元請業者や取引先からの信頼を完全に失い、最悪の場合は受注できる仕事そのものがなくなってしまう事態にもつながります。
雇用保険(退職)
従業員が退職して会社を離れることになった場合も、入社時と同様に速やかな手続きが法律で義務付けられています。
従業員が退職したとき
従業員が退職した日の翌日から10日以内に、管轄のハローワークへ以下の書類を提出しなければなりません。
①雇用保険被保険者資格喪失届
②雇用保険被保険者離職証明書(離職票の交付を伴う場合)
手続きに必要な確認資料
ハローワークに書類を提出する際には、退職日までの賃金支払状況や退職の理由を証明するため、以下の確認書類の提示・添付を求められます。
- 賃金台帳(退職前の賃金支払実績が確認できるもの)
- 出勤簿(またはタイムカード)
- 労働者名簿
- 退職理由の確認ができる資料(退職届など)
従業員との連絡が途絶えてしまうケースも見られますが、そのような場合であっても事業主は法律に基づいた退職手続きを完了させる義務があります。
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労働保険事務組合RJCは、建設業に特化した事務組合として、専門の社労士による雇用保険の入社時の手続きや退社時の手続きの代行も行っています。
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