下請けの事故なのに元請けが報告?2027年から変わる労災のルール

中小事業主マガジン

この記事はこんな方におすすめです

  • 一人親方に仕事を発注している建設業の社長
  • 下請けの一人親方がケガをした場合の対応を知りたい社長
  • 2027年から始まる労災報告制度について知りたい社長

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はじめに

建設現場を仕切る社長さん、日々の現場管理や安全対策、本当にお疲れ様です!

現場で一緒に働く下請けの一人親方さんが、もし作業中にケガをしてしまったら……。

「一人親方さんは個人事業主だし、うちの社員じゃないから関係ないよね?」

「一人親方さんが自分で手続きすればいいのかな?」と思ったことはありませんか?

実は、2027年1月1日から法律が大きく変わり、下請けの一人親方さんがケガをした場合、仕事を頼んだ元請会社(発注者)に国へ報告する義務が生まれることになりました!

「えっ!うちが報告しなきゃいけないの!?」と驚かれた社長さんも多いのではないでしょうか。

この記事では、社会保険労務士の立場から、専門用語をできるだけ使わずに、新しいルールのポイントを噛み砕いて分かりやすくお伝えしますね。

難しい計算や面倒な手続きの前に、まずは「何が変わるのか」を一緒に確認していきましょう!

今まではどうだった?会社が報告する「労働者の事故」と「一人親方の事故」の違い

まず、これまでのルール(現状の仕組み)からお話ししますね。

普段、自社の社員さん(給料を払って雇っている労働者)が現場でケガをした場合、
会社には「労働者死傷病報告」という書類を労働基準監督署に提出する義務があります。

  • 休業が4日未満の軽いケガの場合 3月分をまとめて定期的に報告します。
  • 休業が4日以上の重いケガの場合 事故が起きたら、速やかに報告書を出さなければいけません。

社長さんも、社員さんの事故に関しては「労基署に報告が必要だな」とご存じだったかもしれませんね。

しかし、下請けの一人親方さんの場合はどうだったでしょうか?

一人親方さんは、会社に雇われている「労働者」ではなく、個人でお仕事を受けている「個人事業主」です。
そのため、現状のルールでは、一人親方さんが現場でケガをしても、元請会社に報告義務はありませんでした。
一人親方さん自身が自分で労災保険の申請を行わない限り、国や労基署は「いつ・どこで・どんな事故が何件起きたのか」という正確な数字を把握することができなかったのです。

「一人親方さんが労災申請を出せば国にも件数は伝わるけれど、申請しない小さな事故や、そもそも報告されないケガの全体像が国には見えていなかった」というのが、これまでの現状でした。

2027年1月1日から何が変わる?「発注者」に報告義務が生まれる理由

そこで登場したのが、2027年1月1日から新しくスタートする制度です!

国は「一人親方さんなどの個人事業主も、安全な環境で働けるように守らなければいけない」と考えました。
しかし、個人事業主の事故件数を国が把握できていない状態では、適切な安全対策を立てることができません。

そこで、「個人事業主に仕事を発注した事業者(元請など)が、事故の報告をしてくださいね」というルールにガラリと変わることになりました。

新しいルールのポイントは、大きく分けて次の3つです。

  1. 仕事を頼んだ「発注者」が報告義務を負う 一人親方さんに直接仕事を発注した社長さん(元請・直近の元請)が、ケガの発生を国(労基署)に報告しなければならなくなります。
  2. 発注者がいない場所では「管理している事業者」が報告する もし発注関係が複雑だったり、明確な発注者がいないような場所で事故が起きた場合は、その現場や作業場所を管理している事業者が報告を行います。
  3. 「働いている場所」を提供する側の責任が重くなる 事業主というのは、基本的に労働者や職人さんが安全に働ける環境を整える立場にあります。どこかの現場に使われて入っている以上、その現場のトップである元請会社が責任者として事故を把握し、報告する役割を担うことになります。

つまり、これからは「一人親方さんは自営業だからうちには関係ない」という言い訳が通用しなくなるのです。

下請けの一人親方さんがケガをした時も、社員さんの事故と同じように「元請社長がしっかりと報告する」という責任が発生します。

直近の元請社長が責任者に!現場でケガが起きた時に慌てないための準備

「直近の元請が責任者になる」と言われても、建設現場の構造は少し複雑ですよね。
一次下請け、二次下請け、三次下請け……と、何重にも重なっていることが多いはずです。

基本的には、「その一人親方さんに直接仕事を頼んだ、すぐ上の元請(直近の元請)」が報告の義務を負うことになります。

では、2027年1月の施行に向けて、社長さんは今からどんな準備をしておけばよいのでしょうか?

① 現場に入る一人親方さんの「労災保険」の加入状況を確認する

元請社長として報告義務を果たすことはもちろん大切ですが、事故が起きた時に一番困るのは、ケガをした一人親方さん本人です。一人親方さんは、自分で「一人親方労災保険(特別加入)」に入っていないと、現場でケガをしても治療費や休業補償がでません。 また、元請である社長さん自身も、現場監督や元請元から「現場に入る職人さん全員の労災番号を出して」「社長自身の労災保険番号(中小事業主特別加入)はどこ?」と聞かれて焦った経験はありませんか?

② 社長ご自身の「中小事業主特別加入」も忘れずに!

建設業の中小企業では、社長自身やご家族(家族従事者)も現場に出て汗を流すことが多いですよね。 実は、会社の社員(労働者)をカバーする通常の労災保険だけでは、社長自身や役員さんの現場でのケガは補償されません。 現場でケガをした時に困らないため、そして現場監督から「労災保険番号がないと現場に入れませんよ!」と言われて焦らないためにも、社長さんご自身が「中小事業主の特別加入」をしておくことが非常に重要です。

新しいルールが始まると、現場全体の安全管理や労災対策の目が一層厳しくなります。「知らなかった」では済まされない時代になっていきますので、今からしっかり自社と下請けさんの労災環境を整えておきましょうね。

まとめ

2027年1月1日からの新ルールについて、最後にもう一度ポイントをおさらいしておきましょう。

  • これまでは、一人親方さんのケガについて元請会社に報告義務はありませんでした。
  • 2027年1月1日以降は、仕事を発注した「直近の元請社長」に報告義務が発生します。
  • 一人親方さんだけでなく、元請である社長ご自身の現場での事故を守るためにも「特別加入」の準備が不可欠です。

建設現場では、いつどのようなトラブルや事故が起きるか分かりません。
「うちの会社は労災保険番号って取得できているのかな?」
「社長の私も特別加入に入れるの?」
「現場監督に言われたけれど、どこ手続きすればいいか分からない……」
そんなお悩みや不安をお持ちの社長さん、どうぞご安心くださいね。

建設業専門の労災保険手続きや特別加入についてのお困りごとは、「中小事業主特別加入RJC」にご相談ください!


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ご注意:この記事は2026年10月15日時点の情報に基づいて書かれています。
時間の経過により内容が変更されている可能性がありますので、ご利用の際は必ず最新の情報をご確認ください。
監修者の紹介

林満

元厚生労働省 厚生労働事務官

厚生労働大臣認可 愛知労働局長認可 建設業専門

労働保険事務組合RJC アドバイザー

林 満

はやし みつる

1971年に労働省(現厚生労働省)愛知労働基準局に入局。以降、名古屋東労働基準監督署や瀬戸労働基準監督署、愛知労働局で労災補償課および労働保険適用課にて奉職。適用指導官、職業病認定調査官、労災第一課長、労災保険審査官、労災管理調整官を歴任。特に特別加入制度の手続きや給付に関する相談対応に精通し、職業病認定調査官や労働者災害補償保険審査官としても活躍。2022年までの50年以上にわたる実務経験を持つ労災保険のエキスパート。現在はスーパーゼネコンの安全協力会において特別加入の相談指導を行っている。