今まで報告不要だった社長の労災!2027年から何が変わる?

中小事業主マガジン

この記事はこんな方におすすめです

  • 従業員と一緒に現場作業をしている建設業の社長
  • 2027年から始まる労災報告制度について知りたい社長
  • 社長自身がケガをした場合の報告義務を知りたい社長

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はじめに

2027年1月1日から、建設業の社長自身が現場でケガをした場合にも、新たな労災報告制度が適用されます。

これまでは従業員の事故には会社の報告義務がありましたが、社長自身の事故には同じ報告義務がありませんでした。

なぜ制度が変わるのか、誰が報告するのか、建設業の事例を交えてわかりやすく解説します。

今までは社長がケガをしても報告義務がなかった?

① 従業員がケガをしたら会社に報告義務がある

建設業では、社長自身が従業員と一緒に現場作業をすることも多いですよね。

例えば、従業員3人を雇っている建設会社があるとします。

ある日、従業員が現場作業中に足場から転落して骨折してしまいました。

この場合、会社には労働基準監督署へ事故を報告する義務があります。

提出する書類は「労働者死傷病報告」です。

報告の時期は、従業員の休業日数によって異なります。

休業4日以上の場合

従業員が仕事中の事故で4日以上休業した場合は、遅滞なく労働基準監督署へ報告する必要があります。

休業4日未満の場合

休業が1日から3日までの場合は、3か月ごとにまとめて報告します。

例えば、1月から3月までに発生した事故は、4月末までに報告する仕組みです。

このように、従業員の事故については、以前から国が発生状況を把握できる制度がありました。

② 社長自身がケガをした場合はどうだった?

では、同じ建設現場で社長自身がケガをした場合はどうでしょうか。

例えば、従業員3人と一緒に作業していた社長が、足場から転落して骨折したとします。

病院で診察を受けたところ、2週間の休業が必要になりました。

この場合、これまでは社長自身の事故について、従業員と同じ労働者死傷病報告を提出する義務はありませんでした。

なぜなら、会社の社長は原則として労働者ではないからです。

労働者死傷病報告は、基本的に会社に雇われている従業員の事故を報告する制度です。

そのため、社長自身が現場でケガをしても、同じ報告制度の対象にはなっていませんでした。

ただし、社長が労災保険に特別加入している場合は、労災保険の補償を受けるための手続きを行うことができます。

事故の報告義務がないことと、労災保険の補償を受けられるかどうかは別の話です。

③ なぜ社長の事故も報告するようになる?

今回の改正には、大きな理由があります。

それは、国が中小企業の社長や役員の業務上災害を十分に把握できていなかったことです。

従業員がケガをした場合は、会社から労働者死傷病報告が提出されます。

そのため、国はどのような事故が、どのくらい発生しているのかを集計できます。

一方、社長自身がケガをした場合はどうでしょうか。

労災保険に特別加入している社長が保険給付を請求すれば、国はその請求を通じて事故を把握できます。

しかし、すべての社長が特別加入しているわけではありません。

また、特別加入していても、すべての事故について保険給付を請求するとは限りません。

そのため、労災保険の請求だけでは、社長自身の事故を十分に把握できなかったのです。

例えば、同じ現場で従業員と社長がそれぞれケガをしたとします。

従業員の事故は会社から報告されますが、社長の事故は必ずしも国に報告される仕組みにはなっていませんでした。

同じ建設現場で起きた事故でも、ケガをした人の立場によって、国が把握できる情報に違いがあったのです。

そこで、社長や役員などの事故についても情報を集め、事故の原因を分析し、今後の労働災害防止につなげるため、新しい報告制度が設けられることになりました。

2027年1月から社長の労災報告はどう変わる?

① 社長自身の事故も報告対象になる

2027年1月1日から、一定の条件を満たす中小企業の社長や役員の業務上災害について、新たに報告義務が生じます。

例えば、従業員5人を雇っている建設会社の社長が、現場で従業員と一緒に作業していたとします。

社長が作業中に転倒して骨折し、10日間休業することになりました。

このような事故は、新しい制度の報告対象となる可能性があります。

報告義務の対象となるのは、原則として次のような事故です。

・社長や役員が労働者と同じ場所で作業していた

・仕事中の事故などによってケガや病気になった

・死亡、または4日以上の休業が発生した

つまり、社長が現場でケガをしたら、すべて報告しなければならないというわけではありません。

例えば、ケガをしても休業が3日以内だった場合は、原則として今回の義務的な報告の対象外です。

また、社長が一人で作業していた場合など、労働者と同じ場所で作業していないケースについても、報告義務の対象となるか確認が必要です。

大切なのは、社長自身の事故についても、一定の条件を満たせば労働基準監督署への報告が必要になるという点です。

② 社長がケガをしたら誰が報告する?

ここが、建設業の社長に知っておいてほしいポイントです。

新しい制度では、中小企業の社長や役員が報告対象となる事故に遭った場合、原則として仕事を発注した注文者(元請け)が労働基準監督署へ報告します。

例えば、次のようなケースを考えてみましょう。

A建設が元請けとして工事を行っています。

その工事を、従業員3人を雇っているB工務店が下請けとして請け負いました。

B工務店の社長も、従業員と一緒に現場で作業しています。

ある日、B工務店の社長が足場から転落して骨折し、2週間休業することになりました。

この場合、報告義務を負うのは原則としてB工務店です。

元請けのA建設が、B工務店の社長の事故を必ず報告するわけではありません。

一方、B工務店の従業員がケガをした場合は、従来の労働者死傷病報告のルールに従って対応することになります。

つまり、社長自身がケガをした場合と、従業員がケガをした場合では、報告する制度が異なるのです。

なお、一人親方などがケガをした場合には、仕事を発注した「特定注文者」や現場を管理する事業者が報告主体となる仕組みがあります。
この内容についてはまた別の記事で詳しくお伝えします。

中小企業の社長や役員の場合は、原則として所属企業が報告するという違いがあります。

「元請けから仕事をもらっているから、事故の報告も元請けがする」とは限りません。

建設業の社長は、この違いを知っておくことが大切です。

③ 報告するときは何を伝える?

新しい制度では、報告対象となる事故が発生した場合、会社が労働基準監督署へ必要な情報を報告します。

報告する内容には、主に次のようなものがあります。

・ケガをした社長・役員の氏名や年齢

・事故が発生した日時や場所

・工事名や現場の情報

・どのような作業中に事故が起きたのか

・ケガの内容や休業見込期間

・労災保険の特別加入の状況

例えば、社長が足場から転落した場合は、どのような作業をしていたのか、どこから転落したのか、どのようなケガをしたのかなどを確認します。

報告は、原則として電子申請で行う仕組みです。

電子申請が難しい場合には、当面の間、紙での報告も認められます。

また、報告対象となる事故が発生した場合は、遅滞なく報告する必要があります。

事故が起きたときに慌てないように、社内で事故の状況を記録する方法や、報告を担当する人を決めておくと安心ですね。

建設業の社長が知っておきたい報告義務と特別加入

① 労災報告をすれば補償を受けられる?

今回の改正で注意したいことがあります。

それは、労災の事故報告と、労災保険の補償を受けるための手続きは別だということです。

例えば、建設会社の社長が現場でケガをして、会社が労働基準監督署へ事故を報告したとします。

しかし、報告をしただけで、社長が自動的に労災保険の補償を受けられるわけではありません。

一般的に、会社の社長や役員は労働者ではないため、従業員と同じようには労災保険が適用されません。

そこで重要になるのが「労災保険の特別加入」です。

特別加入は、本来は労災保険の対象とならない中小事業主などが、一定の条件を満たすことで労災保険に加入できる制度です。

建設業では、社長自身が従業員と一緒に現場作業をすることも多くあります。

足場からの転落、工具によるケガ、資材の運搬中の事故など、社長自身にも危険があります。

そのような万が一の事故に備えるために利用できるのが、中小事業主等の労災保険特別加入です。

ただし、特別加入していれば、すべての事故が必ず補償されるわけではありません。

実際に補償を受けられるかどうかは、事故の状況や業務との関係などによって判断されます。

② 特別加入していなくても報告は必要?

「うちは社長が労災保険に特別加入していないから、報告しなくてもいいのでは?」

そう思う社長もいるかもしれません。

しかし、今回の報告制度と特別加入は別のものです。

新しい制度では、労災保険に特別加入しているかどうかにかかわらず、報告対象となる事故については報告が必要になります。

例えば、社長が特別加入していない状態で現場作業中に骨折し、2週間休業したとします。

報告対象となる条件を満たしていれば、会社には事故を報告する義務があります。

ただし、事故を報告したからといって、社長が労災保険の補償を受けられるわけではありません。

また、事故が起きてから特別加入しても、加入前の事故について補償を受けることはできません。

つまり、事故の報告義務があることと、社長自身が労災保険で守られていることは別なのです。

建設業の社長は、今回の制度改正をきっかけに、ご自身の労災保険の加入状況も確認しておくことが大切です。

③ 2027年に向けて社長が準備しておきたいこと

2027年1月1日からの制度開始に向けて、建設業の社長は何を準備すればよいのでしょうか。

まずは、社長自身がどのような現場で作業しているのかを確認しましょう。

従業員と一緒に現場作業をしている場合は、新しい報告制度の対象となる可能性があります。

次に、事故が起きたときの社内の連絡方法を決めておきましょう。

例えば、社長がケガをして入院した場合、社長自身が報告手続きを行うことは難しいかもしれません。

そのような場合に備えて、事故の状況を確認する担当者や、労働基準監督署への報告を行う担当者を決めておくと安心です。

また、元請けや現場監督との連絡体制を確認しておくことも大切です。

社長自身の事故について所属会社に報告義務がある場合でも、現場で事故が発生した際には、元請けなどとの情報共有が必要になることがあります。

そして、もう一つ確認しておきたいのが、社長自身の労災保険の特別加入です。

今回の制度改正は、社長自身の事故を国が把握し、事故防止対策に役立てるためのものです。

一方、労災保険の特別加入は、万が一の事故に備えて社長自身の補償を確保するための制度です。

目的は違いますが、どちらも現場で働く建設業の社長に関係する大切な制度です。

新しい制度が始まる前に、報告のルールと特別加入の状況を確認しておきましょう。

まとめ

2027年1月1日から、建設業の社長自身が現場でケガをした場合にも、新たな労災報告制度が適用されます。

これまでは従業員の事故に報告義務がありましたが、今後は一定の条件を満たす社長自身の事故についても、所属する会社が報告する必要があります。

ただし、事故を報告しただけでは、社長自身が労災保険の補償を受けられるわけではありません。

現場で働く社長が万が一のケガに備えるには、労災保険の特別加入が大切です。

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ご注意:この記事は2026年10月14日時点の情報に基づいて書かれています。
時間の経過により内容が変更されている可能性がありますので、ご利用の際は必ず最新の情報をご確認ください。
監修者の紹介

林満

元厚生労働省 厚生労働事務官

厚生労働大臣認可 愛知労働局長認可 建設業専門

労働保険事務組合RJC アドバイザー

林 満

はやし みつる

1971年に労働省(現厚生労働省)愛知労働基準局に入局。以降、名古屋東労働基準監督署や瀬戸労働基準監督署、愛知労働局で労災補償課および労働保険適用課にて奉職。適用指導官、職業病認定調査官、労災第一課長、労災保険審査官、労災管理調整官を歴任。特に特別加入制度の手続きや給付に関する相談対応に精通し、職業病認定調査官や労働者災害補償保険審査官としても活躍。2022年までの50年以上にわたる実務経験を持つ労災保険のエキスパート。現在はスーパーゼネコンの安全協力会において特別加入の相談指導を行っている。