塗装屋は「塗料倉庫」の労災に注意!エアレスの洗浄も、明日の調色も労災ゼロ!?

中小事業主マガジン

この記事はこんな方におすすめです

  • 夜の倉庫で、エアレスの洗浄や塗料の調色・小分け作業をしている社長
  • 「うちは職人だけで事務員なんていないから、事務所労災なんて一生関係ない」と元請に言い切っている方
  • 「労災の特別加入カード」を財布に入れ、これで24時間無敵だと信じきっている方

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はじめに

社長が自社の塗料倉庫で塗料の準備や道具の洗浄中にケガをした場合、現場労災の特別加入は適用されません

倉庫作業は事務所等労災の管轄のため、別途特別加入が必要です。

さらに2025年10月より、事務員がいなくても倉庫作業の見込みがあるだけで事務所等労災の成立が完全義務化されました

塗料倉庫の中では、あなたの労災カードは「ただの紙切れ」です

建設業の事業主が加入できる労災保険の「特別加入制度」には、大きく分けて2種類が存在します。

  1. 現場労災の特別加入:建設工事の「現場内」でのケガを補償。
  2. 事務所等労災の特別加入:現場以外の事務所、工場、資材置き場などでのケガを補償。

多くの塗装屋の社長が加入しているのは「1」の現場用です。

しかし、この保険はあくまで「元請の工事現場などの現場内」で起きた事故を守るためのものです。

あなたが毎日行っている、自社の塗料倉庫での塗料の調色・小分け作業、エアレス機やローラーの洗浄、空いた一斗缶や廃塗料の片付けなどは、「現場作業」ではなく「事務所(現場外)の作業」とみなされます。

つまり、自社の塗料倉庫でシンナー缶のフタを開けた瞬間から、「完全な無保険状態」で引火や爆発、有機溶剤のリスクと隣り合わせにいることになるのです。

【実例】「明日の段取り」は現場作業じゃない!?労災0円の最高裁判決

「でも、明日塗るペンキの準備なんだから、現場の労災が使えるだろう。理屈に合わない!」 そう怒りたくなる気持ちは分かりますが、その甘い認識を打ち砕いた有名な最高裁判決(広島中央労基署長事件)があります。

ある建設会社の社長が、工事予定現場の「下見」に行き、その帰りに事故で亡くなりました。

社長は「現場労災の特別加入」をしていましたが、国は遺族への補償を不支給(0円)としました。

理由は、現場の下見や見積もりは「現場作業」ではなく、「営業等の事業(事務所等労災)」に該当するからです。現場用の保険しか持っていなかったこの社長は、現場に向かうための準備であっても補償されなかったのです。

塗料倉庫での明日の材料づくりや、機材のメンテナンスも、これと全く同じ理屈で「現場外の業務(特定の工事現場に付随しない業務)」として無情に切り捨てられます

「事務員ゼロだから関係ない」は、2025年10月で終わりました

「でも、うちは奥さんも手伝ってないし、事務員なんか一人も雇ってない。だから事務所労災自体に入れないはずだ」 かつてはそうした言い訳も一部で通用しましたが、令和7年(2025年)10月の厚生労働省の通達により、完全に逃げ道が塞がれました。

新ルールでは、事務員がいなくても、現場の職人や社長が以下の作業を行う「見込み(可能性)」が少しでもあるなら、事業所として事務所等労災を成立させる義務があると明記されました。

  • 土場・資材置き場等での整理作業(重機、電動工具等の清掃、整理整頓、メンテナンス作業等を含む)

自らハイエースを運転し、倉庫でエアレスの洗浄や塗料の管理をする社長の会社は、まさにこの「義務化」のド真ん中(対象)にいるのです。

解決策:炎上してからでは遅い。社長の命を守る「ダブル特別加入」

倉庫で一斗缶を足に落として骨折したり、シンナーに引火して大ヤケドを負ったりしてから「実は事務所労災にも入りたくて…」と遡って加入することは絶対にできません。

シンナーの臭いが立ち込める塗料倉庫で作業をする社長が、自分自身をフルガードするための唯一の解決策は、「現場労災」と「事務所労災」の両方で特別加入(併用加入)することです。

まとめ:そのケガ、自腹で払えますか?

シンナーで意識がもうろうとしたり、疲れ切った体で作業している時こそ、事故は起きます。もしあなたが不慮の事故に遭い、頼みの綱だった特別加入カードが「現場じゃないから使えません」と突き返されたら、残された家族と会社の資金はどうなるでしょうか。

「現場と事務所のダブル加入」や、倉庫作業をする「兼務職人」の複雑な保険料計算を、自力で労働基準監督署で行うのは至難の業です(そもそも中小事業主の特別加入は直接監督署ではできず、事務組合を通す必要があります)。

まずは建設業専門の労働保険事務組合(RJCなど)にすぐ相談し、現場だけでなく、最も危険と隣り合わせの「塗料倉庫」でのあなたを守るための正しい保険環境を、今日から整えてください

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ご注意:この記事は2026年7月24日時点の情報に基づいて書かれています。
時間の経過により内容が変更されている可能性がありますので、ご利用の際は必ず最新の情報をご確認ください。
監修者の紹介

林満

元厚生労働省 厚生労働事務官

厚生労働大臣認可 愛知労働局長認可 建設業専門

労働保険事務組合RJC アドバイザー

林 満

はやし みつる

1971年に労働省(現厚生労働省)愛知労働基準局に入局。以降、名古屋東労働基準監督署や瀬戸労働基準監督署、愛知労働局で労災補償課および労働保険適用課にて奉職。適用指導官、職業病認定調査官、労災第一課長、労災保険審査官、労災管理調整官を歴任。特に特別加入制度の手続きや給付に関する相談対応に精通し、職業病認定調査官や労働者災害補償保険審査官としても活躍。2022年までの50年以上にわたる実務経験を持つ労災保険のエキスパート。現在はスーパーゼネコンの安全協力会において特別加入の相談指導を行っている。