\この記事はこんな方におすすめです/
・従業員とトラブルになりたくない人
・従業員に長く働いてほしい人
・手当をつけようか考えている人
建設業の就業規則:就業規則の定義
人が働くということは、働く側が労働の提供をして、使用者がそれに対するお金を払うことですよね。
このとき、雇用する側とされる側の関係が一方的にならないように定めているのが、労働基準法などの法律です。
そして、それをより具体的に会社のルールとしたものが就業規則になります。
労働時間や休日、賃金、安全衛生管理に関することなど、働く上でのルールや条件を法律に基づいて規則として明文化し、雇用する側とされる側、労使間で合意した上で届け出をします。
建設業は、これまで36協定の特別条項を締結していると時間外労働に上限がありませんでした。
しかし、2016年の「働き方改革関連法」の成立により、時間外労働の上限規制が設けられました。
今後は就業規則をしっかり作り、管理することが必要とされています。
建設業の就業規則:就業規則って必要なの?
就業規則は会社単位ではなく、事業所単位で作成します。
一つの事業所で従業員が常時10人以上いる場合は必ず作成し、管轄の労働基準監督署に届け出をしなくてはいけないという法的な義務があります。
10人以上というのは、正社員だけではなく、パートや契約社員など非正規も含みます。
「労働者10人未満の会社」では、法律上作成の義務はなく、提出は任意です。
しかし、労働基準法については、会社の大きさや労働者の数に関わらず、すべての会社において守らなくてはいけません。
なぜなら労使間で問題やトラブルが発生した時に、明確なルールがないということで大きな問題に発展してしまうことがあるからです。
特に建設業界は、労災事故などの安全管理や労働時間、雇用形態などが他の業界とは大きく異なっていて、特殊な業界といえます。
そういう意味でも、従業員が2,3人であったり、小規模であったりしても、就業規則を作成することが薦められています。
建設業の就業規則:就業規則に書くべき項目
就業規則に必ず記載しなければならない事項を絶対的記載事項といいます。
仕事をする上で基本的なルールで、大きく3つあります。
労働時間
始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇
ならびに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合における就業時転換に関する事項
賃金関係
賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切、支払の時期、昇給に関する事項
退職関係
退職に関する事項では、解雇・定年・契約期間の満了など、退職に関するすべての事項を記載しなければなりません。
注意が必要なのは、解雇事由です。
就業規則に記載のない事由による懲戒解雇は行うことができないと考えられているので、解雇事由は詳
しく記載するようにしましょう。
上記に加えて、建設業界においては特に、規則に記載した方がいい項目があります。
安全管理・健康管理
建設業は、他の業界と比べて労災事故が多いため、就業規則にも従業員の安全管理や健康管理について規定する必要があります。
たとえ従業員の不注意で起こってしまった労災事故の責任も、会社の安全配慮義務違反を問われ、場合によっては損害賠償を請求されることがあります。
「夏場にヘルメットを着用しない」「健康診断の受診を拒否する」といった従業員がいる場合、就業規則の服務規定を絡めて指導することも必要でしょう。
建設業特有の労働時間制度
建設業は、一定期間に建物等を完成させなければならないなどの理由から特殊な業種とされ、36協定さえ提出すれば、労働時間の制限が法的にはありませんでした。
そのため残業が無制限と思っている経営者も少なくないのではないしょうか。
しかし長時間労働は、労災事故の要因となったり、生産効率の低下にもつながるので、就業規則上で、具体的な労働時間制度の規定が必要になります。
また従業員が車に乗り合わせて現場へ移動する時間、悪天候で現場作業ができない時間や、他の作業の待ち時間など、給料が必要な時間か、不要な時間かを就業規則でしっかり示す必要があります。
この「給与の支払いが必要な労働時間」と「給与の支払いが不要な拘束時間や休憩時間」の違いは、従業員だけでなく、経営者も勘違いしている場合も多いです。
よく調べてみると、時間換算すると必要以上に給与が多かったり、法律上必要とされない残業代を払っていたりすることがあります。
建設業特有の労働時間・休憩時間・拘束時間をしっかり規定することで、無駄をなくし、従業員の勘違いを防ぐことでトラブルを防ぎましょう。
また、繁忙期と閑散期をうまく使った賃金体系にすることも重要でしょう。
ほかに、資格取得の必要も多い業種なので、研修や資格取得の義務などの規定の作成もおすすめします。
建設業の就業規則:就業規則を作成した後の手続きは?
作成・変更が行われた後は、労働基準監督署へ届出するまでに「労働者への周知」と「意見書の添付」をしなくてはいけません。
従業員への周知
従業員に就業規則の内容を周知させることが必要です。
周知とは、「従業員が必要なときにすぐに確認できる状態」を指し、主に以下の3つの方法のいずれかです。
①見やすい場所に掲示、もしくは備え付ける
②書面にして従業員に交付する
③データとして保存し、従業員がいつでも閲覧できるようにする
意見書の添付
「意見書」とは、就業規則を作成、変更した場合に、その内容に対して労働者側の意見を聴いた証明書のことです。
なお、求められているのは、あくまでも労働者の意見を「傾聴すること」です。
就業規則の内容について、従業員の同意を得ることまでは求められていません。
仮に、就業規則に反対する旨の意見書が添付されていても、就業規則は受理されます。
10人以上の従業員がいる場合、労働基準法90条では、就業規則の作成・変更をした場合、労働者側の意見を聞き、書面化して提出することが義務付けられています。
所轄の労働基準監督署へ届け出をする
作成ができたら、届け出を行います。
「意見書」(従業員代表者の記名・捺印)を添付し、提出します。
建設業の就業規則:就業規則を作成するメリット
欠勤、遅刻・早退、退職などのトラブルを防ぐ
建設業は現場集合などが多く、遅刻や早退なども他業種に比べ多い業界ですが、就業規則に明記することでトラブルを防ぐことができます。
懲戒解雇の対応
従業員側の勤務態度、過失によるトラブルなどの問題があった時、懲戒解雇や減給、解雇などの処分が考えられます。
就業規則に明記しておけば不当解雇として逆に訴えられる可能性を減らすことができます。
福利厚生の手厚さによる会社のイメージアップ
就業規則をしっかり作成することで会社の規律を保つことができます。
ルールを守る従業員が評価されるなどの風潮を作ることができます。
また待遇や福利厚生の良さをアピ-ルし、会社のイメージアップを図ることができます。
まとめ
10人未満の従業員がいる事業主の中には、就業規則を作る必要はないと考えていた方も多いと思います。
しかし建設業は他業界と比べて繁忙期・閑散期の有無や休憩時間、拘束時間などが突発的に発生するなど特徴の多い業界です。
労使間で様々なトラブルを防ぐためにも、就業規則の作成をしておきましょう。
また、「働き方改革関連法」では「労働時間の適正な把握」が求められています。
「残業代を支払わなかった」「必要以上に賃金を支払った」ということがないように就業規則をもとに適切な勤怠管理をしなくてはいけません。
なお、「働き方改革関連法」への対応は、建設業については猶予期間が設けられ、2024年4月1日から上限規制の適用が決まっていますが、事前に準備をしておく必要があります。
特に建設業界において大きな問題である人手不足を改善し、建設業を魅力ある業界にしていくためにも、労働基準法に沿った適正な就業規則を作成しましょう。