建設業の中小事業主と特別加入  仕事中のケガで使えなかった!?どんな場合に使える?

中小事業主マガジン

 \この記事はこんな方におすすめです/

・特別加入の補償について知りたい人

・休日出勤も残業もよくする人


中小事業主の特別加入(特別労災):どれが労災の対象になる?残業中のケガ・休日出勤中のケガ・工事中のケガ

正解は「工事中のケガ」のみです。
残業や休日出勤で忙しくしている事業主の方は「残業も休日出勤も同じ仕事中なのに、なぜ!?」 と思われるでしょう。
特別加入(特別労災)では、残業や休日出勤において条件があります。
詳しくは2,3で見ていきましょう。

まず、厚生労働省が発行している「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」によると、次のような場合、特別加入(特別労災)の補償の対象になります。
少し難しい内容ですが、大切なことなので一度確認しましょう。

1. 特別加入(特別労災)の申請書、「業務の内容」欄に記載された労働者の所定労働時間(休憩時間を含む)内に特別加入申請した事業のためにする行為およびこれに直接附帯する行為を行う場合(事業主の立場で行われる業務を除く)

2. 労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合

3. 1.または2.に前後して行われる業務(準備・後始末行為を含む)を中小事業主等のみで行う場合

4. 1,2,3の就業時間内における事業場施設の利用中および事業場施設内で行動中の場合

5. 事業の運営に直接必要な業務(事業主の立場で行われる業務を除く)のために出張する場合
※船員である中小事業主等が船員法の適用のある船舶に乗り組んでいる場合は、積極的な私的行為を除き業務遂行性が認められます。

6. 通勤途上で次の場合
 労働者の通勤用に事業主が提供する交通機関の利用中
 突発事故(台風、火災など)による予定外の緊急の出勤途上

7. 事業の運営に直接必要な運動競技会その他の行事について労働者(業務遂行性が認められる者)を伴って出席する場合


ここにある通り、事業主の特別加入(特別労災)での労災給付は、「その日、従業員も働いていたかどうか」が最大のポイントとなります。
つまり、特別加入(特別労災)を申請する時に申告した「就業時間」内かどうかが判断基準です。
特別加入(特別労災)の加入者が行う業務の内容や範囲は、労働者の場合と違って、加入者自身の判断によって決まる場合が多いです。

経営者であれば、朝、昼、夜と時間帯に関係なく、働くケースが多いですよね。
そんなみなさまにとって、従業員の就業時間内かどうか、という基準は少し納得いかないかもしれません。
しかし、国として必要な人に必要な補償を行うため、あるいは不正受給等を防いで正しく補償するためには、ある程度の基準に従うのは大切なことですね。


なお、工事中ではなく「経営者としての仕事」中のケガについては、残念ながら特別加入(特別労災)の補償の対象にはなりません。
例えば、経営者として出席する会議や出張、また得意先との接待中などにおきたケガなどは、特別加入(特別労災)の対象外ですので注意が必要です。

いざ労災請求できる場合にはどのような補償があるのか、確認してみましょう。
主な内容は以下のとおりです。

○特別加入(特別労災)の療養補償
労災事故による治療費が全額補償されます。

○特別加入(特別労災)休業補償
労災事故により休業が4日以上にわたるときに、休業4日目より給付基礎日額の80%が補償されます。
ただし所得喪失の有無にかかわらず、療養のため補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業について全部労働不能であることが必要です。

○特別加入(特別労災)の後遺障害への補償

○特別加入(特別労災)の労災事故による死亡に対する遺族給付

○特別加入(特別労災)の葬祭料や介護補償など
ただし、2つ以上の事業の事業主となっている場合で、1つの事業に特別加入の承認を受けていても、特別加入をしていない他の事業の業務により被災した場合は適用となりません。
通勤災害については、一般の労働者の場合と同様に取り扱われます。


中小事業主の特別加入(特別労災):建設業の中小事業主 残業中のケガ

残業中のケガについては、どうでしょうか。
1,で確認した通り、「その日、従業員も働いていたかどうか」つまり「その日、従業員も残業中だったかどうか」がポイントです。
事業主がたった一人で残業していた時のケガについては、特別加入(特別労災)の補償の対象外です。
この理由を平たく言うと、「事業主が従業員に給料を払いたくない、賃金をけちろうとしているとみなされるため」です。


事業主としての責務を=従業員を雇っている責任をしっかり負っているかどうかがポイントです。
自身のみで残業するのではなく、従業員も一緒に残業していた場合のケガについては、補償の対象となります。

中小事業主の特別加入(特別労災):建設業の中小事業主 休日出勤のケガ

休日出勤についても、考え方は同じです。
事業主の休業補償の証明をするのは、従業員です。
事業主ご自身だけで休日出勤していた場合のケガは、特別加入(特別労災)の補償の対象とはなりません。


中小事業主の特別加入(特別労災):ケガをしたら、事務組合RJCに連絡は必要?

では、いざ事業主ご自身がケガをしてしまったら、どのように手続きしたらいいのでしょうか。
特別加入(特別労災)の加入手続きは、事務組合を通して行います。
しかし、中小事業主の特別加入(特別労災)において労災事故の保険給付に関する手続きは行っておりません。
これは、労働保険事務組合は保険給付に関する事務を行うことができないと法律で定められているためです。
労災事故の際の保険給付請求は、各事業場にて行っていただくことになります。
まずは事務組合RJCにお電話ください。
管轄の労働基準監督署をご案内いたします。


中小事業主の特別加入(特別労災):まとめ

事業主の特別加入(特別労災)の補償についてみてきました。
「その日、従業員も働いていたかどうか」が最大のポイントでした。
いざご自身の労災が起きてから、補償の対象外だった!
通院費や休業補償はどうしよう・・・ということがないよう、普段からご自身と従業員の労務管理も含め、しっかり意識をしていきましょう。

監修者の紹介

林満

元厚生労働省 厚生労働事務官

厚生労働大臣認可 愛知労働局長認可 建設業専門

労働保険事務組合RJC アドバイザー

林 満

はやし みつる

1971年に労働省(現厚生労働省)愛知労働基準局に入局。以降、名古屋東労働基準監督署や瀬戸労働基準監督署、愛知労働局で労災補償課および労働保険適用課にて奉職。適用指導官、職業病認定調査官、労災第一課長、労災保険審査官、労災管理調整官を歴任。特に特別加入制度の手続きや給付に関する相談対応に精通し、職業病認定調査官や労働者災害補償保険審査官としても活躍。2022年までの50年以上にわたる実務経験を持つ労災保険のエキスパート。現在はスーパーゼネコンの安全協力会において特別加入の相談指導を行っている。
   
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