中小事業主が知っておくべき雇用保険 加入条件や必要な手続きは?

中小事業主マガジン
 \この記事はこんな方におすすめです/

・従業員をこれから雇う中小事業主さん

・従業員を雇っているけど雇用保険をかけていない中小事業主さん

従業員を雇ったら、雇用主は雇用保険に加入しなければなりません。
この記事では、雇用保険の加入条件や必要な手続きについて、中小事業主が知っておくべき基礎知識についてわかりやすく解説します。

雇用保険ってなに?

雇用保険とは、主に労働者が失業した場合に、生活と雇用の安定と就職の促進のため、一定の給付を受けられるようにする公的な保険制度です。

事業の規模に関係なく、一定の条件を満たした労働者を雇っている場合には、雇用保険に加入する義務があります。

「一定の条件」とは?

・週の所定労働時間が20時間以上で、なおかつ雇用見込日数が31日以上 を言います。

たとえば、8時から17時までの労働時間、休憩1時間の人を雇ったとします。
その人が週に3日以上仕事をすると、1週間で24時間働くことになります。
あらかじめ「4月だけ」という契約にしていた場合は、4月は30日しかありませんので、週24時間働いていたとしても雇用保険に加入する必要はありません。

一方、4月1日からの契約で、終わりの時期を決めていない場合は、雇用保険に加入しなければなりません。


雇用保険にはいつ加入するの?

雇用保険に加入させなければならない人を雇ったとき、いつ、どんな手続きをすれば良いのでしょうか?

雇用保険の加入手続きは、会社の所在地を管轄するハローワークに出向いて行うことができます。
手続きには、労働者名簿出勤簿などが必要です。
地域によって必要な書類が違う場合がありますので、必ず事前に問い合わせておきましょう。

準備を整えたら、さあハローワークへ!と行きたいところですね。
でも、ちょっと待ってください。
実は、人を雇っても、すぐに雇用保険に加入させる必要はありません。

雇用保険の加入手続きは、雇用した日の「翌月10日まで」に雇用保険資格取得届という書類をハローワークへ提出します。
つまり、雇ってから1ヶ月以上の猶予期間があるのです。

雇った人が長く働いてくれることが社長の希望ですね。
ただ、なかなかうまくいかないこともあるようです。
長く働いてほしいと思っていても、突然仕事に来なくなったり、連絡が取れなくなったりすることもあり、社長の悩みは尽きません。

何度か失敗を繰り返すと、「本当にこの人を雇っても大丈夫か?」「すぐに来なくなるのでは?」と不安に感じてしまいます。
雇用保険の加入手続きは必要な書類をあれこれとそろえ、忙しい合間を縫ってハローワークに出向かなくてはなりません。
はっきり言って面倒です。
せっかく面倒な手続きをすぐにしたのに「3日で辞めてしまった」なんてことが続くと嫌になってしまいますよね。

1ヶ月は人を見極めるのに十分な時間とは言えません。
ただ、一つ言えるのは、そんなに焦って手続きをする必要はないということです。

【!】会社として初めて雇用保険に加入する場合は、雇った日から10日以内の届出が必要ですので注意してください。


すぐに雇用保険に加入しなければならないときって?

先ほど説明した通り、人を雇ってもすぐに雇用保険の加入手続きをする必要はありません。
ただし、そんなにのんびりもしていられない場合があります。

それは、建設業の中小事業主が現場で「雇用保険被保険者証」の提出を求められたときです。

建設業では、現場入場の際、下請業者に対し、労災保険の加入証明書の提出を必須としています。
建設業の社長であれば、一人親方労災保険や中小事業主の特別加入(特別労災)の会員カードの提出が必要です。
現場によってコピーでも良い場合、原本提示が必要な場合があるようです。
最近ではカード型の会員カードでは認められず、一人親方組合や労働保険事務組合が発行する「加入証明書」が必須となっている現場もあります。

現場に入場するのが従業員の場合、現場の労災保険を使うことになります。
社長のように一人親方や中小事業主として労災保険に個別に加入するわけではなく、このような会員カードや加入証明書はありません。

ただ、従業員であることを証明する必要がありますので、そういうときに必要となるのが「雇用保険被保険者証」ということです。
現場ですぐに提出が必要なときは、急いで加入手続きをしてください。


現場入場の条件が厳しくなってきている!

「従業員を雇う雇用主としての義務」と「従業員を現場に入場させるため」のほかにもうひとつ雇用保険の手続きが必要な場合があります。
それは建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録です。

一度は耳にしたことがある社長が多いと思います。

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは、国土交通省が推奨する建設業に関わる技能者の資格・社会保険加入状況・現場の就業履歴などを登録・蓄積し、技能者の適正な評価や建設事業者の業務負担軽減に役立てるための仕組みのことです。
建設業で優秀な人材を確保するために「見える化」するシステムです。

建設業では、わかりにくかった個人ひとりひとりの技能や経験を、共通ルールで蓄積・確認できるようになり、建設業の職人さんのスキルが伝わりやすくなっています。
技能者能力を4段階に評価する「能力評価制度」が導入されています。
登録するとICカードが発行されます。
このICカードは、経歴書のようなものですね。

大手ゼネコンや元請会社に登録するよう勧められたことありませんか?

これだけ聞くと、建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録は面倒だなと思われる社長も多いでしょう。
メリットがたくさんあるので、確認していきましょう!

従業員(技能者)のメリット

・自分の実力を客観的に確認できます。
・技能や経歴を登録・蓄積していくことで、キャリアが適正に評価されます。
・自分のスキルが「見える化」されていてモチベーションアップにつながります。

建設会社のメリット

・現場の入退場管理が効率化できます。
・従業員管理など、事務の仕事が効率化できます。
・「能力評価制度」の高い職人さんを持つことで、会社の評価が上がり、仕事を受注しやすくなります。
ちなみに、レベル4だとICカードがゴールドカードになります。

大手ゼネコンは、すでに導入が進んでいます。
建設キャリアアップシステム(CCUS)のICカードがないと現場入場できない! と、条件が厳しくなってきています。
大手ゼネコンや官公庁の仕事はしていないから、まだ必要ないと思われている社長さん。
早く登録した方が、現在している仕事も就業履歴として蓄積できます。

いまでは様々なものがICカード化されています。
Suica(スイカ)やICOCA(イコカ)の交通系ICカード。
そして健康保険証と一体化すると話題のマイナンバーカード。
これらも登録は面倒でも後々必ず便利になってきています。
建設業に携わる事業者として、ぜひこの機会に建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録を検討してみてください。

雇用保険と建設キャリアアップシステム(CCUS)との関係は?

さて、建設キャリアアップシステム(CCUS)の事業者登録・技能者登録の際に、雇用保険の証明書が必要なのはご存じでしたか?

・事業者登録に必要なもの
 「雇用保険適用事業所設置届」
 これは、会社として最初にハローワークで雇用保険の手続きをした際の書類です。

・技能者登録に必要なもの
 「雇用保険被保険者証」
 これは、従業員を会社の雇用保険に加入させたときの書類です。

従業員を技能者登録すると、現場に入場できるICカードが発行されます。
「雇用保険被保険者証」は必須となっています。
すぐに必要となった場合は、急いで加入手続きをしましょう。


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雇用保険の手続きする暇がない! そんなときは?

建設現場に自分も一緒に入って働く社長は「忙しくてハローワークになんて行っていられない!雇用保険をかける時間もないよ」という方も多いと思います。
また、書類ごとがどうしても苦手で誰かに頼みたいという方もたくさんいらっしゃいます。

そんなときはどうしたらいいのでしょうか?

労働保険事務組合RJCでは、中小事業主の特別加入(特別労災)にご加入いただいた社長限定で、雇用保険加入手続きの委託を受け付けています。
雇用保険で困ったら、まずはお電話ください。

まとめ

雇用保険の加入条件や必要な手続きについて、ご理解いただけましたか?
従業員に安心して働いてもらうための雇用保険です。
そして、現場の仕事はもちろん、事務・管理もできる会社は元請会社から信用されます。

雇用保険加入には、手続き期限が決まっています。
期限を過ぎてさかのぼって手続きしようとすると必要な書類が増え、非常に大変になります。
手続きにもれがないように、自社で手続きの流れを決めておくと良いかもしれません。
わからないことがあればすぐに相談できる相手を見つけておくのも必要ですね。

雇用保険の加入手続きの前に、まず、中小事業主特別加入(特別労災)の加入手続きが必要となります。
特別加入(特別労災)申込みの際には、「従業員の雇用保険が必要」と事務組合RJCにご連絡ください。

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監修者の紹介

林満

元厚生労働省 厚生労働事務官

厚生労働大臣認可 愛知労働局長認可 建設業専門

労働保険事務組合RJC アドバイザー

林 満

はやし みつる

1971年に労働省(現厚生労働省)愛知労働基準局に入局。以降、名古屋東労働基準監督署や瀬戸労働基準監督署、愛知労働局で労災補償課および労働保険適用課にて奉職。適用指導官、職業病認定調査官、労災第一課長、労災保険審査官、労災管理調整官を歴任。特に特別加入制度の手続きや給付に関する相談対応に精通し、職業病認定調査官や労働者災害補償保険審査官としても活躍。2022年までの50年以上にわたる実務経験を持つ労災保険のエキスパート。現在はスーパーゼネコンの安全協力会において特別加入の相談指導を行っている。
   
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