
中小事業主とは何でしょうか?
何となく言葉は聞いたことがあっても個人事業主と混同していたり、誤ったとらえ方をしていたりする方も多いようです。
この記事では間違えやすい中小事業主と個人事業主の違いや必要な労災保険について解説します。
中小事業主とは
厚生労働省発行の「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」によると、中小事業主とは、特定の業種や企業の規模に基づいて定義される事業主を指します。日本では、事業主が運営する企業の規模に応じて、中小企業とみなされる基準が定められています。この基準は、業種ごとの資本金や従業員数によって区別されます。
中小企業の定義
中小企業の定義は、以下の表の通りです。
業種区分 | 資本金または出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他(建設業等) | 3億円以下 | 300人以下 |
中小事業主は、これらの基準を満たす企業を運営する事業主を指し、労災保険への加入が義務付けられています。従業員が仕事中に怪我をしたり病気になった場合、中小事業主は労災保険により保険給付を受けることができます。適用対象となる労働者は、正社員に限らず、アルバイトやパートタイムの従業員も含まれます。
中小事業主の責任
中小事業主としての責任には、従業員の安全と健康を守るための適切な対策を講じることが含まれます。これには、安全衛生教育の実施や職場環境の改善が求められます。また、事故や病気が発生した際には、迅速かつ適切な対応を行うことが期待されます。
特に中小企業では、限られたリソースの中で労災保険の適切な管理が求められます。そのため、事業主は労災保険制度についての理解を深め、適切な手続きや管理を行うことが重要です。
個人事業主とは
個人事業主とは、個人で事業を行っている人のことです。
会社員として起業に勤めているなら、会社と雇用契約を結んでいます。
それに対し、個人で事業を行うために税務署に開業届を提出している人を、税法上「個人事業主」と言います。
たとえば建設現場で働く一人親方、アルバイトのみを雇って営んでいるラーメン店の店主、個人で作品を仕上げるイラストレーターなど。
人に雇われて働いている場合は個人事業主ではありません。
また、株式会社や合同会社などの法人を設立している場合も個人事業主とは言えません。
個人事業主は、事業主1人だけで事業を行っている場合だけを言うのではありません。
家族や従業員を雇って複数で事業を行っていても、それが法人でなければ個人事業主です。
中小事業主と個人事業主の違い
比較項目 | 中小事業主 | 個人事業主 |
---|---|---|
事業形態 | 法人企業の経営者 | 法人格を持たない個人の事業者 |
企業規模 | 資本金数億円以下、従業員数数百人以下 | 主に一人で事業を営む、一部少数の従業員を雇用する場合もあり |
法的義務 | 労災保険への加入が義務付けられている | 労災保険は任意加入が多い |
収益処理 | 法人の収益として計上される | 事業の収益が事業主個人の所得として扱われる |
経営判断 | 企業の組織運営に基づいて経営判断を行う | 事業主個人が全ての経営判断を行う |
事業主と労災保険
建設業を個人で開業し、現場で仕事をしようとすると、必ず労災保険の加入について指摘を受けることになります。
覚えておきたいのは、原則、個人事業主は労災保険に加入することはできない、ということです。
労災保険は、会社に雇用されて労働する労働者のための保険だからです。
本来、事業主は仕事中にケガをしても国の労災保険からの補償は受けられず、自費で診療を受けるなどしなくてはなりません。
国民健康保険は使えますが、自己負担は発生します。
治療が長引いたり休業したりしなければならないときにも何の補償もありません。
民間の傷害保険に加入するなどして補償を得る方法はあります。
ただ、この方法では根本的な解決にはなりません。
労災保険に加入できないデメリット
個人事業主は、原則労災保険に加入できません。ただ、一部の業種に限っては特別に労災保険に加入することが認められています。
これが、労災保険の特別加入(特別労災)制度です。
建設業の事業主の場合、労災保険に加入できるかどうかはとても重要な問題です。
労災保険に加入していない場合、次のようなデメリットが考えられます。
デメリットその1 労災事故にあっても補償を受けられない
労災保険に加入していないと、労災事故にあっても治療や入院にかかる費用はすべて自分持ちになることは、先ほど説明しました。
仕事を休んだ時の休業補償などは民間の保険に入るなどして自分で対策しなければならず、大きな負担となります。
デメリットその2 現場に入れない
労災保険に加入していない最大のデメリットがこれです。
ゼネコンなどの大きな建設現場では、現場入場の際に労災保険の加入について必ず確認します。
労災保険に加入しておらず、せっかく受注した仕事を逃してしまったという話をよく耳にします。
元請会社としては、労災保険に入っていない事業主が工事中にケガをすると、発注者としての安全配慮義務に問われる可能性があります。
このため、現場入場の際には「労災保険に加入しているか」を確認しているというわけです。
事業主が加入するべき保険は?
事業主は労災保険の特別加入(特別労災)制度を利用することにより、労災保険に加入することができます。
そこで重要になってくるのが、特別加入(特別労災)の種類です。
特別加入(特別労災)の種類は、以下の4種類です。
・中小事業主等
・一人親方等
・特定作業従事者
・海外派遣者
インターネットで検索すると、「個人事業主が加入するのは中小事業主の労災保険」という誤った情報が出てくる場合があります。
最初に説明した通り、「中小事業主」=「個人事業主」ではありませんので、これは間違いです。「事業主」という言葉が誤解を招いているようです。
労災保険の加入時において考えるべきなのは、「従業員を雇っているかどうか」です。
個人事業主でも従業員を雇わず、自分と家族だけで仕事をしているのなら、一人親方の労災保険に加入します。
ちなみに、同居の家族はここでいう従業員には当てはまりません。
他人の従業員を雇って仕事をしている個人事業主は中小事業主の特別加入(特別労災)に加入します。
従業員を雇っていない場合は、個人事業主でも法人の代表者でも一人親方の労災保険に加入します。
まとめると、こんな感じです。
従業員を雇っていない個人事業主、法人の代表者→一人親方の労災保険
従業員を雇っている個人事業主、法人の代表者→中小事業主の労災保険
まとめ
いかがでしたでしょうか?
中小事業主と個人事業主の違い、加入すべき労災保険についておわかりいただけましたか?
中小事業主の特別加入(特別労災)RJCでは、従業員を雇っていてもいなくても、どちらの事業主も加入できる労災保険を取り扱っています。